「目録情報の基準」(第5版)は,「目録情報の基準 第4版」にさらなる改訂を加えたものである。
「目録情報の基準」(第5版)は,2020年8月3日から適用する。
なお,第4版から第5版への改訂にあたり,用語の見直しを実施したが,以下の制定及び改訂における経緯に関する部分については,第4版以前の用語をそのまま用いることとする。
「目録情報の基準」の歴史は,東京大学文献情報センター時代に遡る。
1984年11月,東京大学文献情報センターは,目録情報の専門家で構成される「カタロギング・ワーキングパーティ」を設置し,「目録情報の基準」の制定について審議を行った。
同年度の審議の結果は,「目録情報の基準(検討案)」として公表され,広く関係者から意見,要望等を求めることとされた。
1985年度,「カタロギング・ワーキングパーティ」から改組された「目録情報専門委員会」は,検討案に対する意見等を集約し,残された問題についてさらに検討を重ねた結果,「目録情報の基準」を制定した。この「基準」は1986年3月,「目録システム利用マニュアル データベース編」(初版第1刷)に組み込まれて刊行され,業務担当者の利用に供されることとなった。
1986年4月,東京大学文献情報センターを改組して学術情報センターが発足した。これに伴い「目録情報専門委員会」は,「総合目録委員会」に改組され,また,そのワーキンググループとして「総合目録小委員会」が設置されることとなった。「総合目録委員会」は,引き続き「目録情報の基準」の検討・審議を行い,1986年12月には,「データベース編」の抜刷という形で,「基準」は広く大学図書館等の関係者に配布されることとなった。
その後,目録システムへの参加組織の拡大,総合目録データベース利用の増加等に伴い,「基準」に関する疑問,意見等が数多く寄せられるようになった。学術情報センターは,「総合目録委員会」等における検討・審議の結果を個別に回答する他,業務担当者への連絡誌「オンライン・システム・ニュースレター」に,「基準」の変更部分,適用細則等を掲載し,周知徹底を図ることとした。
一方,目録システムの利用に当たっては,操作上の問題点が指摘され,作業負荷の軽減を求める要望が提出された。これに応えるべく,学術情報センターはシステムの改訂を行い,併せて,「基準」の関連条項の改訂を行った。
この「基準」改訂条項は,「オンライン・システム・ニュースレター」に掲載される他,「目録システム利用マニュアル データベース編」(初版第3刷)に「『目録情報の基準』改訂条項」として収録され,1987年12月14日より運用されることとなった。
この「改訂条項」の概要は,次のとおりである。
当初,図書書誌ファイルにおける書誌構造の表現は,書誌単位毎にレコードを作成することによって行っていた。
改訂後,レコード作成単位は,最上位の集合書誌単位及び単行書誌単位のみとなり,レコード作成を行わない中位の書誌単位の記録は,単行書誌単位のレコードに行うこととなった。また,これに伴い,記述文法の変更,3階層以上の書誌構造の表現にかかわる条項の追加が行われた。
当初,典拠レコード(著者名典拠レコード,統一書名典拠レコード)の作成及びそれにかかわるレコード間のリンク形成は必須であった。
改訂後,典拠レコードの作成は任意となり,リンク形成も必須のものではなくなった。
ただし,この任意化は,あくまでレコード作成,リンク形成にかかわるものであり,決して書誌レコード中の標目の作成自体が任意となったわけではない。
第2版と旧版(「データベース編」初版第3刷)との相違は,概ね次のとおりである。
初版刊行後の改訂条項については,「オンライン・システム・ニュースレター」に掲載されているのみであった。
第2版に統合することとしたこれらの改訂条項は,以下に示すとおりである。
固有のタイトルの判断基準にかかわる条文は,一部表現の明確性に欠ける箇所があり,業務担当者に混乱をもたらすおそれがあった。
第2版では,条文の整備を行い,解釈にゆれが生じないよう配慮することとした。
当初,統一書名典拠レコードの作成範囲は無著者名古典及び聖典に限定されていた。
第2版では,音楽作品についても,レコード作成を認めることとした。
目録システムにかかわる用語は,独自のものが多く,また,一般的な用語法と微妙に異なっているところがあった。
第2版では,これらのうち,標準的な用語法に従っても支障を来さないと思われるものについて,可能な限り用語の統一を図ることとした。
レコード入力レベルについては,一部のデータ要素において規定の明示が行われていない箇所が存在した。
第2版では,全体との整合性を保ちつつ,これらの項目の整備を行うこととした。
レコード記述文法については,一部の項目において構成が不明瞭な箇所が存在した。
第2版では,記述例の充実を含め,これらの項目の整備を行うこととした。
「目録情報の基準・解説」の中には,「基準」本体の適用細則として定めることが適当な条項が含まれていた。一方,「基準」の適用細則として機能すべき「目録システムコーディングマニュアル」は,「オンライン・システム・ニュースレター」付録という形で,着実に刊行されつつあった。
第2版では,「解説」条項のうち,「基準」本体の該当箇所に繰り込まれるべきもののみを採用し,他の条項は「コーディングマニュアル」に収録することとした。なお,一部の条項は,目録規則の改訂等の結果,不要と判断されるため,廃止することとなった。
第2版においては,上記の改訂の他,具体例の訂正・追加,条文の整備等,全体的な見直しを行った。
目録システムの拡大充実及び各図書館におけるシステム化の進展状況を踏まえ,1997年4月から目録システムをクライアント・サーバ方式の新システムに移行した。
これに伴い,レコードの即時更新及び和洋ファイルの統合(書誌IDの統一)等,新目録システムへの移行段階での変更点を反映した,総合目録データベースにおけるレコード作成の新たな基準として「目録情報の基準」(第3版)を刊行した。
この第3版と第2版の主な相違は,次のとおりである。
1997年4月に実施した,総合目録データベースの和洋ファイルの統合に伴い,データベース構成図,ファイルの取扱い等について修正した。
従来,「基準」における各レコードの解説に対応する形で「レコード項目一覧」及び「記述文法」が示されていたが,目録システムの改訂による個々の項目の変更に迅速に対応できていなかった。
一方,「コーディングマニュアル」の整備充実が進んだことに伴い,各レコード項目の詳細な記述を行うことが可能となった。
そのため,第3版では,「レコード項目一覧」と「記述文法」を「コーディングマニュアル」に収録することとした。
外字登録をする際の基本辞書として,従来「大漢和辞典」「広漢和辞典」「新字源」を使用してきたが,「新字源」については,版毎に基本となる検字番号が異なることが判明したため,基本辞書から除外した。
また,2000年1月から運用する予定であった多言語対応目録システムを想定し,JIS X 0221の利用の項目を追加した。
「基準」の中で用いる用語について,原則として目録規則の用語に合わせるよう整備した。例えば,「標題」は「タイトル」にする等の修正を行うこととした。
これまで固有のタイトルではないものの例として挙げられていたものは,和書の例のみであったため,洋書の例を加えることによって,業務担当者の便宜を図った。
要望が多かった索引について,用語の整備を含めて作成した。
1993年度から,従来のシステム(旧CAT)をそのままUNIXで使用できるよう,UNIX上で作動するXUIPを開発し,各メーカーあるいは図書館に提供してきた。
1996年12月には,これまで目録システムが稼動してきたメインフレームの負荷を軽減する目的と,オープンシステムへの移行の第一歩として,データベース部分のみをサーバに移行し,あわせて,漢字キーワードの追加及びデータベースの即時更新を実現した。
1997年度から新システム(新CAT)の運用を開始し,ワークステーション上で稼動する新システムでサービスを開始した。実際に図書館側でこのシステムを利用するには専用のクライアントが必要なことから,各機関でこの準備が整うまでの間,従来のシステムでのサービスも並行していた(2004年12月まで)。あわせて,和洋データベースの統合を行い,新システムではフルタイトルキーの利用も可能になった。
これらの段階的な変更を経て,2000年1月から,新システムに多言語資料対応機能を追加することによって,従来取扱うことのできなかった資料のデータベース化が可能となった。
多言語対応機能として,データベースをUCS(Universal multiple-octet coded Character Set = 国際符号化文字集合-日本語,中国語などの漢字圏を含めた世界的に共通なコード体系の文字セットであり,JIS X 0221で規定されている)に変換し,数多くの漢字を効率よく検索できるよう漢字統合インデクスを用意した。
これらのシステム的な対応を実施する一方で,新システムでの多言語資料,特に中国語資料の取扱いについて,1995年度から設置された「中国語資料データベース化検討ワーキンググループ」において検討を行い,その結果を「中国語資料の取扱い(案)」として公表し,広く関係者から意見・要望を求めた。
「目録情報の基準」(第4版)は,多言語資料対応機能における変更点と,中国語資料を取扱う上での注意事項を盛り込む形で編集を行った。特に後者については,上記の「中国語資料の取扱い(案)」及びそれに対する意見を反映させたものである。
この第4版と第3版との主な相違は,次のとおりである。
目録システム用文字セットを,従来のJIS X 0201,JIS X 0208及び拡張文字セットからJIS X 0221に変更することに伴い,特殊文字・記号に関わる部分及び外字に関わる部分の条項の整備を行った。
従来,暫定的な取扱いとして記述していた中国語資料に関する部分を,正規の取扱いとするよう条項を整備した。
多言語資料対応目録システムでは,中国語資料に対して漢字キーワードを作成するため,日本語の読みを分かち書きして付与することにしている。
その作業の際に,読み方及び分かち方の目安となるよう,中国語資料用の規則を用意した。
中国語資料における統一書名典拠レコードの作成範囲を,無著者名古典を含む古典,聖典及び音楽資料とし,著者を有する古典についても,レコード作成を認めることとした。
第3版以降,新規に参照MARCとして導入されたドイツMARC(Deutsche National-bibliographie)及び中国MARC(CHINA MARC)について,データベース構成図等への反映を行った。
2014年7月開催の「第8回大学図書館と国立情報学研究所との連携・協力推進会議」において,2020年に向けた目録所在情報サービス見直しの検討を要請され,これからの学術情報システム構築検討委員会は,現行の目録所在情報システム(NACSIS-CAT/ILL)の2020年に向けた軽量化・合理化を検討課題として設定し,議論を重ねてきた。2015年7月には,実務に即した詳細な検討作業を進めるためにNACSIS-CAT検討作業部会を設置し,その結果「NACSIS-CAT/ILLの軽量化・合理化について(最終まとめ)」(以下,最終まとめ)が2018年10月19日付で確定された。
これに伴い,本基準についても第5版として上記の最終まとめを反映し,改訂することとなった。第5版と第4版の相違は,次のとおりである。なお,「BOOK」等のデータセット名については,「1.3.3 総合目録データベース」に記載している。
第5版は,2020年の運用変更点を反映させたものであり,雑誌の書誌・所蔵等の考え方に改訂は行っていない。ただし,第1部から第3部までを通して,「最終まとめ」の用語集に基づいて,用語の統一をはかった。「レコード」は「データ」に,「ファイル」は「データセット」に変更した。
2020年8月3日以降,「目録情報の基準」は,この「第5版」を採用する。第4版以前の「基準」は,2020年8月3日以降の総合目録データベースにおけるデータ作成・修正作業に使用してはならない。ただし,第5版適用以前に作成された既存のデータに関して,遡及的に修正を行わない。そのため,固有のタイトルとみなされないものをVOLグループの繰り返しによって1書誌として作成されていたデータと,出版物理単位ごとに1書誌として作成されるデータが並存することがありえるが,これを許容する。その他,書誌・所蔵における第4版以前の扱いに関する詳細は各項に記載している。