目録情報の基準 第6版


[目次]
[前ページ] 0.0 日本目録規則2018年版のNACSIS-CATへの適用について
[次ページ] 0.2 概要

0.1 概念モデル

NCR2018 #0.3本規則が依拠する概念モデル

 本規則が依拠する概念モデルは、FRBR等の概念モデルを基本としている。FRBR等は実体関連分析の手法を使用した概念モデルであり、実体、関連、属性をその構成要素とする。
 本規則が依拠する概念モデルの概要を、図0.3に示す。

(出典: 日本図書館協会目録委員会. “日本目録規則2018年版”. https://www.jla.or.jp/mokuroku/ncr2018/, (参照2024-08-01))

0.1.1 実体

NCR2018 #0.3.1 実体

 実体は、書誌データの利用者の主要な関心対象を表す単位である。目録は、各種の実体についての記述(属性および関連の記録)から成る。
 本規則における実体は、第1グループ、第2グループ、第3グループの3種から成り、合わせて11個ある。
 第1グループの実体は、知的・芸術的成果を表す。次の4つの実体があり、著作、表現形、体現形、個別資料の順に、順次具現化される構造をもつ。

a) 著作
個別の知的・芸術的創作の結果、すなわち、知的・芸術的内容を表す実体である。例えば、紫式部による『源氏物語』の知的・芸術的内容は、著作である。著作には、法令等、音楽作品などを含む。また、雑誌など多くの著作を収録した資料も、その全体の知的・芸術的内容を、著作ととらえる。

b) 表現形
文字による表記、記譜、運動譜、音声、画像、物、運動等の形式またはこれらの組み合わせによる著作の知的・芸術的実現を表す実体である。例えば、著作『源氏物語』の原テキスト(厳密には各系統がある)、各種の現代語訳、各種の外国語訳、朗読(話声)などは、それぞれ表現形である。音楽作品の場合は、ある作品(著作)の記譜や個々の演奏が、それぞれ表現形である。

c) 体現形
著作の表現形を物理的に具体化したものを表す実体である。例えば、著作『源氏物語』のある現代語訳のテキスト(表現形)の単行本、文庫本、大活字本、電子書籍などは、それぞれ体現形である。

d) 個別資料
体現形の単一の例示を表す実体である。例えば、刊行された図書の、図書館等に所蔵された個別の一点一点は、それぞれ個別資料である。2 巻組の辞書のように、複数のユニットから成ることもある。
本規則では、第1グループの実体の総称として、「資料」の語を用いる。また、体現形または表現形を種類分けする場合(例えば、更新資料、地図資料、三次元資料)、情報源に言及する場合(例えば、資料自体、資料外)などに、必要に応じて「資料」の語を用いることがある。

 第2グループの実体は、知的・芸術的成果を生み出す主体を表す。次の3つの実体がある。
e) 個人
(略)
f) 家族
(略)
g) 団体
(略)
 第3グループの実体は、著作の主題となるものを表す。次の4つの実体がある。
h) 概念
(略)
i) 物
(略)
j) 出来事
(略)
k) 場所
(略)
 さらに、第1グループおよび第 2 グループの各実体を、著作の主題として、第3グループの実体とみなすことがある。
 本規則では、第3グループの実体の総称として、「主題」の語を用いることがある。
(出典:同書 p24-25)
 NACSIS-CATでは統一書名典拠データセットを、著作の典拠データセットとし、名称も「著作典拠データセット」に変更する。書誌データとの関連はリンクブロックのUTLデータで表される。
 表現形については独立したデータ作成は行わないが、UTLデータ上に表現形の識別要素を記録することができる。
 体現形が書誌データ作成の基本になるが、書誌データの中には上記の著作、表現形の要素も含んだ形となる。
 個別資料は所蔵データとして表される。

0.1.2 属性

NCR2018 #0.3.2 属性

 属性は、実体の発見・識別等に必要な特性である。実体ごとに必要な属性を設定する。属性の記録は、関連の記録とともに、実体についての記述を構成する。
(出典:同書 p25)
 NACSIS-CATのフィールド定義における「属性」(固定長/可変長)とは異なる概念である。

0.1.3 関連

NCR2018 #0.3.3 関連

 関連は、実体(資料、個人・団体、主題)間に存在する様々な関係性である。異なる実体間に存在する関連(例えば、著作とそれを創作した個人との関連)と、同じ種類の実体間に存在する関連(例えば、ある著作とそれを映画化した別の著作との関連)とがある。関連の記録は、属性の記録とともに、実体についての記述を構成する。
(出典:同書 p25)
 NACSIS-CAT では、関連に該当するものとして以下のリンクがある。なお、関連は、CWフィールドなど、コーディングマニュアルの「記述ブロック」に書かれる場合もある。
(1) 書誌構造リンク
図書の体現形の書誌データと本基準 0.2.6 における最上位の書誌レベルの体現形の書誌データとの関連
(2) 所蔵リンク
図書および雑誌の体現形の書誌データと個別資料の所蔵データとの関連
(3) 著者名リンク
図書および雑誌の体現形の書誌データと個人・家族・団体に対する著者名典拠データとの関連
(4) 著作リンク
図書の体現形の書誌データと著作の典拠データとの関連
(5) からも見よ参照リンク
本基準 0.1.4の統制形アクセス・ポイントの典拠形アクセス・ポイント同士の関連
(6) タイトル変遷リンク
先行雑誌(変遷前誌)の書誌データ内にあらわされる著作と後続雑誌(変遷後誌)の書誌データ内にあらわされる著作との関連

0.1.4 名称、識別子と統制形アクセス・ポイント

NCR2018 #0.3.4 名称、識別子と統制形アクセス・ポイント

 本規則における実体の識別には、名称および(または)識別子、名称を基礎とする統制形アクセス・ポイントが重要な役割を果たす。
 名称は、それによって実体が知られている、語、文字および(または)その組み合わせである。例えば、資料の名称としての「タイトル」がある。
 識別子は、実体を一意に表し、その実体と他の実体を判別するのに役立つ番号、コード、語、句などの文字列である。識別子の具体例としては、ISBN、ISSNが挙げられる。
 目録の機能を実現するためには、典拠コントロールを行い、各実体に対して統制形アクセス・ポイントを設定する必要がある。統制形アクセス・ポイントには、典拠形アクセス・ポイントと異形アクセス・ポイントがある。統制形アクセス・ポイントは、名称またはタイトルを 基礎として構築する。
(出典:同書 p25-26)

 NACSIS-CATでは、典拠形アクセス・ポイントは、これまでの著者名典拠データ、統一書名典拠データの統一標目形に該当し、NCR2018に合わせて典拠形アクセス・ポイントの語を使用する。また統一書名典拠データはNCR2018適用後は、著作典拠データに変更する。異形アクセス・ポイントは、著者名典拠データ、著作典拠データの「から見よ参照」に該当する。


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