新ILLクライアントのためのガイドライン

1997.11.04 作成

1997.11.30 更新

目次

  1. はじめに
  2. 新ILLシステムの構成
  3. 主なオペレーション
  4. 特定クライアントの留意点
  5. 他のシステムとの連携として考えられる機能
  6. 将来の変更予定及びその他留意点
  7. このガイドラインの入手法

1. はじめに

 本ガイドラインは,学術情報センターが開発している新目録所在情報システム(以下,新システムと呼ぶ)対応ILLクライアントシステムを作成するために必要な基本的事項(ファイル構成、CATPによるオペレーション等)を解説する。
 また、本ガイドラインは,新システムで正確に図書館間相互協力(ILL)業務を行うためにクライアントシステムが具備すべき要件,及び,サーバシステムへのいたずらな高負荷をもたらさないためにクライアントシステムが具備すべき要件を規定する。
 なお、本ガイドライン中で「CATガイドライン」としているものは「新目録システムクライアント作成のためのガイドライン」であるので、それを参照すること。また、各メソッドについての詳細は「Cataloging information Access & Transfer Protocol (CATP/1.0)仕様書 第2版」を参照のこと。
 本ガイドラインは,今後とも追加・修正されることがある。最新のガイドラインについては,随時公表していく予定である。

2. 新ILLシステムの構成

2.1 NACSIS-ILLの概要
 NACSIS-ILLはデータベース中の1つのレコードを依頼館・受付館が互いに参照し合い、実際の業務に応じてレコードを更新するシステムである。レコード作成は依頼館が行う。1つのレコードに対して依頼館は変更しないが、受付館は業務の進行に応じて変更されることがある。

2.2 ファイルの種類
2.2.1 複写ファイル,貸借ファイル
NACSIS-ILLのファイルは,大きく複写、貸借の2種類に分けられる。

(1)複写ファイル
 複写業務に関わるレコードを収める。
(2) 貸借ファイル
 貸借業務に関わるレコードを収める。
2.2.2カレントファイル,バックファイル
 さらに,システムの負荷を軽減するために,複写ファイル,貸借ファイルそれぞれをカレントファイル,バックファイルに分けて運用している。
(1) カレントファイル
 バックファイルの条件に当てはまらないレコードを収めたファイル。SERVERPROCEDURECALL(以下SPC)可。
(2) バックファイル
 レコードが終了状態(CANCEL,確認、返却確認)で、かつ最終更新日から半年以上経過したレコードを収めたファイル
 (さらにそれ以前のレコードはデータベース上から削除しており,参照できない)。SPC不可。過去のレコードを参照
 する時に使われる。
2.2.3 NACSIS-ILLを構成するファイル
 よってNACSIS-ILLは,以下の4つのファイルから構成される。
(1) 複写カレントファイル
(2) 複写バックファイル
(3) 貸借カレントファイル
(4) 貸借バックファイル

2.3 操作対象のファイル
 ILLレコード操作の対象となるのは自館が依頼館もしくは受付館であるレコードのみである。以下のファイル名を指定すると、GETHANDLE時に生成された利用者情報をサーバが参照して自動的に対象レコードを限定する。よって自館にかかわるレコードの集まりを仮想ファイルとみなすことができる。
依頼
受付
複写
カレント(_COPYO_)
カレント(_COPYA_)
バック(_COPYOB_)
バック(_COPYAB_)
貸借
カレント(_LOANO_)
カレント(_LOANA_)
バック(_LOANOB_)
バック(_LOANAB_)
限定のために参照されるフィールド
OMLID
AMLID
 上記を実現するため、COPYA/LOANAにおけるAMLIDS、COPYO/LOANOにおけるOMLIDS以外のフィールドについてINDEXLIST不可としている。

3. 主なオペレーション

 CATPを使った主なオペレーションについて解説する。各オペレーションにおいて、以下の事項について問題なく機能することを前提とする。
(1)センターが規定する文字種以外の,機種固有の外字を使用しないこと。また,センターが規定する全ての文字種が表示・入力できること。
(2)センターが規定する全てのフィールドデータを表示・入力・削除ができること。
(3)各フィールドについてセンターが規定する長さ,個数の表示・入力ができること。

3.1 開始(handleの取得)
 CATガイドラインに準ずる。

3.2 検索(frameの作成)
 CATガイドラインに準ずる。

3.3 レコード情報の取得
3.3.1 取得方法

(1) SEARCH, SCANのresponse
(2) RETRIEVE
(3)SPCのresponse
3.3.2 注意点
(1) サーバに負荷が大きいSEARCHは避ける。
(2) 大量件数のframeに対するSCANは避ける。
(3)大量件数のRETRIEVEは避ける。
(4)edit-type=9でのレコード情報の取得はサーバの負荷が高いため、多用を避ける。

3.4 レコード状態別件数の取得(INDEXLISTの実行)
 依頼レコードについてはOMLIDS、受付レコードについてはAMLIDSフィールドに対しINDEXLISTメソッドを使うこと。 

3.5 レコードの状態遷移及びデータ修正(SPCの実行)
 SPCメソッドを使用する。カレントファイルに対してのみ有効である。

3.6 終了(handleの開放)
 CATガイドラインに準ずる

4. 特定クライアントの留意点

 新システムにおいては,クライアント作成に自由度を持たせており,全業務が行えるクライアントの他に機能を限定した目的別のクライアントシステムの作成も可能である。ただし,相互協力の精神を具現するために,必ず1つは受付機能を持つクライアントを開発しなければならない(ただし、クライアント完成までは受付機能を現ILLシステムで補完してもよい)。本ガイドラインでは,以下のようなクライアントを想定している。 4.1 各クライアント共通に具備することが推奨される要件
4.1.1業務区分の明確化
 現在どの業務を行っているかが,画面上で明確にわかるようにすること。特に教育用/業務用の別、複写/貸借の別に注意する。
4.1.2 処理待ち業務の通知
 ILLレコードの操作のタイミングは、レコード状態の遷移によって処理すべき場合と、「物(複写物、現物)」の移動にともなって処理すべき場合の2種類がある。前者のケースについては処理すべき業務がある旨をアラート表示等で積極的に利用者に知らせることが必要である。
 具体的には、以下の状態のレコードが存在する場合である。
(1)複写依頼業務:新着照会、クレーム回答待
(2)貸借依頼業務:新着照会、クレーム回答待、返却クレーム未処理
(3)複写受付業務:未処理、クレーム未処理
(4)貸借受付業務:未処理、クレーム未処理、更新請求
4.1.3 記述文法
 クライアントがデータを自動セットにする場合は旧ILLシステムに従うことが望ましい。

4.2 依頼機能を持つクライアントの要件
4.2.1 書誌/所蔵検索

 書誌/所蔵検索はCATクライアントの検索機能を利用すること。
4.2.2 依頼の可否

(1)「ILLFLG=AかつSTAT=A」でない組織(ILL業務を行っていないところ)には依頼しないこと。
(2)COPYS=Nの組織には複写依頼を、LOANS=Nの組織には貸借依頼を、それぞれ行なわないこと。
4.2.3 依頼先の選定
 所蔵館の検索結果は所蔵ID順に転送される。依頼先選定にあたって、偏りがおきないように工夫することが望ましい。例えば、クライアントが依頼先を自動的に決定する場合は、所蔵館をランダムに選択することや、利用者に入力させる際、ランダムに依頼先リストを提示することなどが考えられる。
4.2.4 所蔵典拠
 HVRFYフィールドに"NACSIS-CAT"を自動セットするのは、総合目録所蔵ファイルで依頼先を選定した場合に限ること。
4.2.5 ANSWER, FORWARDの区別
 ILL COMMANDがANSWERもしくはFORWARDのSPCを実行する場合は、利用者にその区別を明確に意識させた上で実行させることが望ましい。
4.2.6 BLDSCへの依頼
 依頼先をBLDSCとしてORDERするかもしくはFORWARDする場合、BLDSC転送対象フィールドに以下に定める文字種以外の文字が入っているか否かを確認し、入っている場合は、転送できない文字が存在する旨を利用者に伝えて、データをサーバーには送信しないこと。
(1) JIS X0201:1997表1で定められたラテン文字用図形文字集合
(2) JIS X0208:1997 附属書4表14で定められたキリール文字
(3) 学術情報センターが定めるEXC文字
4.2.6.1 BLDSC転送対象フィールド
4.2.7 国立国会図書館への依頼
 ORDER時にHMLIDがNDLでかつCLNが空欄の場合は、JPMARC/JPMARCSを検索させるなどして利用者に入力を促すことが望ましい。JPMARC/JPMARCSでの該当データは以下のものである。
(1) JPMARC :REMフィールド\905:$A以下の文字列
(2)JPMARCS :NDLCLNフィールドのデータ
4.2.7.1 NDL転送対象フィールド
4.2.8 督促機能
 貸借業務が備わっているクライアントの場合、STAT=借用中のレコードから返却期限を過ぎたレコードを検索し、利用者に返却を促す「督促機能」を持つこと。利用者の要望に従い督促開始日はDDATE以前に設定できること。

4.3 受付機能を持つクライアントの要件
4.3.1 料金計算
 新ILLサーバはSUMフィールドの自動計算は行なわないため、必要に応じてクライアント側に機能を持つこと。
4.3.2 返却期限
 新ILLサーバはDDATEフィールドの自動セットは行なわないため、必要に応じてクライアント側に機能を持つこと。

5. 他のシステムとの連携として考えられる機能

 下記の機能は必須の要件ではないが、業務やサービスの効率化、利便性を考慮した場合に要求される機能である。

5.1 図書館システム目録検索

(1)依頼時の所蔵検索の際、自館に所蔵していないことを確認して総合目録DBを検索する作業をシームレスに行なう
(2)受付時に書誌データから自館の目録検索を行い、所蔵を正確に確認する

5.2 図書館利用者からの依頼受付

(1) e-mail やWWW上の画面から依頼を受け付ける
(2)依頼の処理状況を図書館利用者がチェックできる

5.3 画像伝送システム

(1)  複写物を画像として送付する。NACSIS-ILLレコードから送付先を渡したり、発送レコードに必要なデータ(ITEM, QNT)等を画像作成ソフトから取り入れたりする
(2)画像データを受け取ったらその場で確認処理ができる

6. 将来の変更予定及びその他留意点

6.1 将来の変更予定
 新システムでは,現システムと比較して以下の諸点を変更することを予定している(ただし,変更の時期は未定である)。新クライアントの作成には,将来の変更をあらかじめ想定されることが望ましい。
(1) UCSコードの採用による多言語対応

6.2 CATPの下位プロトコルについて
 当面CATPは,HTTPプロトコルにおけるPOSTメソッドのオブジェクトボディ上に実装する。ただし,将来変更することもありえるので,あらかじめ想定しておくこと。

6.3 障害に対する留意点
 障害への対応を図る上で,以下の機能を具備することが望ましい。
6.3.1 通信トレース機能
 HTTPレベルまたはCATPレベルでの通信履歴が保存できることが望ましい。

7. このガイドラインの入手法

 以下の方法で本ガイドラインの最新版を提供する予定である。

7.1 WWW:
http://www.cat.op.nacsis.ac.jp/newcat/guideline-ill.html

7.2 その他の入手方法
 以下に連絡すること。その他の入手方法について相談に応じる。
 学術情報センター事業部目録情報課相互協力係:
 TEL: 03-3942-6987, 6988 FAX: 03-3944-7131