目録システムコーディングマニュアル(NCR2018対応版)


[目次]
[前ページ]付録3.3 主題目録番号
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付録4 遡及入力指針

 各参加組織が所蔵するすべての資料のデータベース化を速やかに行うために、資料現物によらずに過去に作成された目録等をもとにした書誌データの作成が可能となるような遡及入力の方法を定める。

付4.0 総則

 ここでは、指針の目的及び範囲を示す。

付4.0.1 (指針の目的)

 既に作成された目録等(カード形式、機械可読形式を問わない、以下「遡及データ」という)により書誌データを作成する上で、注意すべき事項を示すことを目的とする。

付4.0.2 (指針の範囲)

 指針の範囲に含まれる資料は、既に各参加組織で、目録等が作成された資料に限定する。
 具体的にこの指針の及ぶ範囲は、次のとおりである。

 目録等が作成されている資料であっても、資料現物から書誌データを作成するのであれば、正規の書誌データ作成と同じである。このような場合については、この指針の範囲外とする。

付4.0.3 (基本となる基準)

 遡及データから新規に書誌データを作成する基準は、「目録情報の基準第6版」(以下「基準」という)である。

付4.1 書誌データの作成

 遡及データから新規に書誌データを作成する際(このようにして作成された書誌データを、以下「遡及書誌データ」という)のデータの作成単位等、注意すべき事項を示す。

付4.1.1 (遡及書誌データの作成)

 遡及書誌データは、他の参加組織が持つ遡及データや資料現物と一致したものであるかどうかの判断ができるようにするため、現行の目録規則の「記述の第1水準」を満たしている必要がある。

(遡及書誌データの作成に必要な項目)
    GMD:一般資料種別  SMD:特定資料種別  YEAR:出版年
    TR:本タイトル / 最初の責任表示
    ED:版表示
    PUB:出版地 : 出版者 , 出版年
    PHYS:数量(あるいは頁数)
    PTBL:書誌構造リンク
    AL:著者名典拠リンク

 前記の項目のうちPUBフィールドについては、頒布地、頒布者、頒布年を代用することができる。また、書誌構造リンク形成は対応する親書誌データが既に存在するか、あるいは遡及データの親にあたる書誌データが新規に作成可能な場合は、リンク形成することができる。ただし、親書誌データがないか、作成できない場合には、リンク形成は行わない。著者名典拠リンクについては、既に典拠データセット中に該当する典拠データがあれば、リンク形成を行う(→付 4.3)。

付4.1.2 (作成単位)

 遡及書誌データを作成する際の書誌単位は、出版物理単位及び最上位の集合書誌単位である。(基準4.3.2で示す例外を除く)
 遡及データによっては、上記と異なる書誌単位から構成されているものがある。この場合、遡及データの書誌単位を反映させてはならない。

付4.1.2.1 (作成単位の変更)

 遡及データが集合書誌単位で一括して作成されている場合は、遡及書誌データの作成単位を変更しなくてはならない。

付4.1.2.1A (遡及データが集合書誌単位で一括して作成されている場合)

 個々の遡及データが集合書誌単位ごとに作成されており、その下に記録された各巻タイトルが「基準」で考えられている「固有のタイトル」に該当するものであり、かつ、付4.1.1の水準を満たしている場合は、各巻ごとに遡及書誌データを作成しなくてはならない。また、同時に親にあたる遡及書誌データも必要ならば作成し、書誌構造リンク形成(→付4.3.1)を行うことができる。

 (例-作成可能なデータの例)

作成可能なデータの例

 ただし、付4.1.1の水準を満たしていない場合は、遡及データからのデータ作成をしてはならない。このような場合は、必ず資料現物を確認する。

 (例-入力不可能なデータの例)

入力不可能なデータの例

付4.1.2.2 (古典籍、稀覯書の作成単位)

 古典籍、稀覯書に対応する遡及データについては、それぞれコピーごとの遡及データから遡及書誌データを作成する。

付4.1.3 (データの記述)

 新規に遡及書誌データを作成する際には、遡及データ中の各データ要素をもとに「基準」で定める区切り記号法に従って作成する。
各データ要素の記述については、現行の目録規則等に従って記述し、現行の目録規則で定められている表記と異なる表記がある場合は、現行の表記に合わせる。

 (例)
 (カード上の記述)

カード上の記述

(総合目録上の記述)
  TR:會計法規義解 / 平山慶次郎||カイケイ ホウキ ギカイ
  PUB:東京 : 自治館 , 1922
  PHYS:652p ; 22cm
  AL:平山, 慶次郎||ヒラヤマ, ケイジロウ <>

 (出版年、大きさについては対応する現行の表記法に置き換えられている)

付4.2 データの登録

 データの登録に先だって、慎重な検索と、遡及データと検索結果とが同じものであるかどうかを確認するための作業(以下「同定作業」という)を行う必要がある。ここでは、検索時及び同定作業時の注意と、登録時の細則を示す。

付4.2.1 (検索と同定作業)

 遡及データと総合目録データベース、あるいは参照データセット中の書誌データとが、見かけ上、違ったものであるかのようなことがある。
 検索時、遡及データ中の記述のままでは一致データ、一致参照データを検索できないことがあるので、検索手段、検索キーの作成方法等に充分注意する。

 検索の結果、ヒットした書誌データが、これから登録しようとしている遡及データと一致するものであるかどうか、検索結果との間で同定作業をしなくてはならない。
 この作業を怠ると、重複データの発生を招き、ひいては総合目録データベースの品質の低下につながることになる。

 以下、付4.2.1.1以降に検索時及び同定作業時の注意事項を示す。
 遡及データと検索結果との間に、ここで示されているような事項の相違があっても、それだけでは別データを作成する根拠とはならない。

付4.2.1.1 (タイトル等に関する事項の記述)

1) タイトル冠称等の扱いから本タイトル自体が異なってみえることがある。
情報源に表記されている順序に従って遡及データの本タイトルが作成されていることがある。このような場合は、タイトル冠称や、タイトル先行事項が本タイトルと一緒になっているように見えることがある。

 (例)(カード記述上の例)

カード記述上の例

 (総合目録上の例)
TR:現代日本の思想 : シンポジウム : 戦争と日本人 / 日高六郎 [ほか] 著
PUB:東京 : 三省堂 , 1967
PHYS:216p
PTBL:三省堂新書||サンセイドウ シンショ <BN0052284X> 15//a
2) タイトル関連情報等が記録されていないことがある。
遡及データでは、タイトル関連情報にあたる情報が目録対象資料の情報源上に表記されていても、遡及データ上では省略されていることがある。
3) タイトルの字体が異なることがある。
遡及データ中にある字体が、目録システム用文字セット上に無いことがある。あるいはすべて常用漢字に置き換えられていることもある。
また、Wの文字をVV(二連のV)で表しているなどのようなことがある。
4) タイトルの読み(トレーシング)や分かち書きが異なることがある。
遡及データ中にある読み(トレーシング)が、旧かな遣いになっていることがある。あるいは、ローマ字で記述されていることもある。
また、読み(トレーシング)や分かち書きが「基準」等で定められているものとは異なることがある。
ルビにあたる情報が遡及データには記録されていないことがある。

付4.2.1.2 (責任表示等に関する事項の記述)

1) 責任表示の数が異なっていることがある。
責任表示の数が、遡及データと総合目録データベース等とで異なっていることがある。
特に、その数が3のとき、すべてが記述されている場合と、最初の1つのみが記述され、それ以外は省略されている場合とがあるので注意する。

 (例)(カード記述上の例)

カード記述上の例

 (総合目録上の例)
TR:経済原論 / 氣賀健三 [ほか] 著
ED:全訂版

 あるいは、

TR:経済原論 / 氣賀健三、富田重夫、松浦保著
ED:全訂版
2) 責任表示自体がないことがある。
タイトル中に著者自身の名前が含まれているなどの場合は、責任表示自体が遡及データ上では省略されていることがある。

付4.2.1.3 (版表示等に関する事項の記述)

1) 版と刷の区別があいまいなことがある。
「増補」「改訂」等以外の単に数字のみが表示され、それが改版の数字であるかのような表現になっている場合でも、実際は「刷」であることがある。
2) 装丁の異なる特殊な版表示が版として扱われていることがある。
「基準」では、装丁に関わる特殊な版表示は、版としてではなく、VOLフィールドに表現する。
装丁に関わる特殊な版表示については、書誌データ作成単位にも関わるので特に注意する。

付4.2.1.4 (出版等に関する事項の記述)

1) 出版年に刷の年が使われていることがある。
「日本目録規則1987年版」以前の目録規則では、刷の年が採用されている。したがって、出版年の相違であるのか、刷年の相違であるのか、特に注意する。
2) 出版地・出版者の名前が違ってみえることがある。あるいは、出版地自体が記録されていないことがある。
出版地において、地名が変遷若しくは変更していることがある。あるいは、出版者の名称が変更されていることがある。
(例)大穂町  ⇔  つくば市
   商工出版社  ⇔  東京図書

 また、出版地自体が記録されていない場合、原則としては現物を点検、確認する必要があるが、不可能な場合は、[出版地不明]と記録する。

付4.2.1.5 (形態等に関する事項の記述)

1) 大きさに関する情報が記録されていないことがある。
大きさに関する情報が、具体的な数値ではなく、「菊判」「8vo」等の表記が用いられていることがある。
2) 形態に関する事項自体が記録されていないことがある。
特に、付録・付属資料等についての情報がすべて注記として扱われていることがある。

付4.2.1.6 (書誌構造に関する事項の記述)

 遡及データに表現されていた書誌構造は、総合目録データベース上のそれとは大きく異なることがある。書誌構造の有無については同定の判断材料の一つになり得るが、これのみで判断してはならない。(→付4.1.2)
 特に、参照データセット中の書誌データは、「基準」で定めるデータ単位とは異なる場合があるので十分注意する。

付4.2.1.7 (データ間のリンク関係に関する事項)

 総合目録データベース中の書誌データにヒットした場合、当該書誌データが親書誌データであり、子書誌データがリンクされていることがある。その場合、遡及データの書誌単位に注意する必要がある(→付4.1.2)。
 特に、バランスしない書誌構造を持つと考えられるような場合には注意する。

付4.2.2 (登録細則)

 検索、及び同定作業の結果によって、登録作業は次の三つに分けられる。

 総合目録データベース、あるいは参照データセット中に類似書誌データが存在し、その書誌データを利用して登録作業を行う場合は、内容の書きかえを伴うので、新規に書誌データを作成する場合の項目に含む。
 遡及データに該当する一致データに対しての修正は別項で改めてその対応を示す(→付4.4)。
 また、遡及データに該当する一致参照データに対して、流用時に何らかのデータ編集をする必要がある場合は、新規に作成する場合の項目に含む(→付4.2.2.3)。

付4.2.2.1 (一致データを使用する場合)

 総合目録データベース中に遡及データと一致した書誌データが存在した場合は、該当する書誌データをそのまま使用する。このとき、当該書誌データの内容と、遡及データとの間に付4.2.1で示したような相違が見られても、原則として当該書誌データの修正はしない。

付4.2.2.2 (一致参照データを流用する場合)

 参照データセット中に一致参照データが存在し、そのまま流用できる場合は、該当する書誌データをそのまま流用して使用する。このとき、当該書誌データの内容と、遡及データとの間に付4.2.1で示したような相違が見られても、原則として当該書誌データの修正はしない。
 必ず、NOTEフィールドに遡及データをもとにした流用入力である旨、注記をする。

(例) NOTE:***遡及データをもとにした流用入力である

 一致参照データに該当するデータであっても、それが「基準」で定めるデータの作成単位とは異なることがある(→付4.1.2.1)。このような場合は、必ず作成単位を「基準」に合わせなくてはならない。

付4.2.2.3 (新規に作成する場合)

 総合目録データベース、あるいは参照データセット中のいずれにも使用あるいは流用可能なデータがなかった場合は、遡及データをもとにして、新規に書誌データの作成を行うことができる。
 また、総合目録データベース、あるいは参照データセット中に類似した書誌データがあり、そのデータを利用して書誌データを作成する場合も同様とする。
 いずれの場合も、必ずNOTEフィールドに、遡及データをもとにしたデータ作成である旨、注記をする。

(例) NOTE:***記述は遡及データによる

 遡及データに該当する一致参照書誌データに対して、流用時に何らかのデータ編集を行う場合は、より詳しくなるような方向でのみ、データ追加を行うことができる。しかし、遡及データ上に見られないことなどを理由に、一致参照書誌データ上にあるデータを削除することはできない。

付4.3 リンク形成

 遡及データのリンク形成については、現物によらないため、特に慎重に行う必要がある。

付4.3.1 (書誌構造リンク形成)

 書誌構造リンク形成は、常に最上位の集合書誌単位と出版物理単位(「基準」適用以前の書誌データの場合、単行書誌単位)との2階層をつなぐものである。作成の基準は「目録情報の基準 第6版」に従う。遡及データのデータ単位をそのまま反映させることはできない(→ 付 4.1, → 付 4.2.1.6)。
 書誌構造リンク形成は、また、親書誌データの有無によって、その対応を分けて考える。具体的には次の二通りである。

付4.3.1.1 (親書誌データが既に存在した場合)

 親書誌データが既に存在している場合は、当該親書誌データと書誌構造リンク形成を行うことができる。このとき遡及データが、親書誌データの作成の根拠となったと推定される資料よりも、さらに古い資料のものであっても、原則として遡及データをもとにしての修正は行わない。
 親書誌データにあたる参照書誌データが存在した場合は、その参照書誌データを流用入力して、親書誌データを作成することができる。

付4.3.1.2 (親書誌データが存在しなかった場合)

 付4.1で示された指針に従って、親書誌データが作成可能なものについては親にあたる遡及書誌データを作成し、書誌構造リンク形成を行うことができる。
 ただし、作成が不可能な場合(書誌記述の第1水準を満たしていないなど)は、親にあたる遡及書誌データは作成せず、子にあたる遡及書誌データのPTBLフィールドにシリーズについて記録する。

付4.3.2 (著者名/統一書名典拠データリンク形成)

 典拠データセット中に該当する典拠データが存在する場合は、充分に確認を行った上でリンク形成を行うことができる。
 ただし、確認ができない場合は、リンク形成を行う必要はない。

 典拠データセット中に該当する典拠データが存在しなかった場合は、原則として典拠データは作成しない。

付4.4 修正

付4.4.1 (現物からの入力時の修正)

 現物からの入力時に発生した修正であれば、この指針の範囲外である。
なお、修正により書誌データを完成した後、遡及データから作成された旨の注意書きは削除する。

付4.4.2 (遡及データからの入力時の修正)

 既存の書誌データが資料現物によって作成されたものか、遡及書誌データであるかによって対応が異なる。
 以下、二つに分けて対応を示す。

付4.4.2.1 (資料現物をもとにして作成された書誌データに対する修正)

 書誌データは現物を優先する。したがって、修正等は行わない。

付4.4.2.2 (遡及書誌データに対する修正)

 原則として修正は行わない。ただし、書誌データがより豊かになる方向でのみのデータ要素の追加を行うことができる。

付4.5 所蔵情報

 遡及データに記録されている所蔵に関する情報を記録する。

付4.5.1 (所蔵データ作成時の注意)

 遡及データ中の所蔵情報が、入力時に変更されている可能性がある。図書館間相互貸借等を考慮し、所蔵情報の記録については慎重に対処する。また、所蔵データ中に遡及データによる入力であることを示す情報を付加する。

(例) LDF:@遡及データ
    LDF:$A遡及入力分

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